今日、3月11日は日本人にとって忘れてはならない日。
いまだ日常生活を再開できない方々も多く、
被災地域も復興に向けて模索している場所もある。
あの震災の揺れは今でもはっきりと思い出せる。
自然の脅威を目の当たりにし、為す術(すべ)無き思いに駆られた日。
同時に人々の心を一致団結させて、一つの方向に向かう強さを知った日。
あの日から多くの学びを得た気がする。
生きることとは?
死ぬこととは?
自然と共存する生き方とは?
海と人とのつながりは?
原発は本当に必要なのか?
自然と人の未来とは?
海の恐ろしさを知ったあの日から4年、
俺を含め、多くの友人は変わらずに海に向かっている。
人間が海から与えられる生気に触れたくて。
波乗りという行為を通して海のパワーに触れたくて。
波乗りで生気を養うサーファーたち。
海から与えられる生気は、
カラダだけでなくココロまで活力を養われる。
サンディエゴ出身のある一流アメフト選手の話をひとつ・・・。
体をぶつけ合うアメフト選手にとって、
怪我や疲労はつねに悩みのタネで、
他のスポーツと比べても選手生活は短い。
地元サンディエゴのヒーローであるにもかかわらず、
まだスーパーボウル優勝の経験がない彼は、
37歳にして体力の限界を感じ、引退を考えていた。
そんな時期にサーフィンと出会い、
その肉体は再び若さを取り戻し、
たたかう意欲を蘇らせたという。
アメフトのように自分から仕掛けるスポーツと違い、
サーフィンは乗るべき波を待たなければいけないもの。
攻撃ではなく、協調することが大切。
「そこには自分と自然だけしか存在しない。
オレはボードに股がり海に出たとき、
自然と接していることを生まれてはじめて実感した。
海から上がると、オレは誰かれとなくハグしたくなる。
自然にそんな気持ちになれるんだ。
とても穏やかで、安らかな気持ちが生まれる」
海で生気を養った彼は、
一度は引退まで考えたにもかかわらず、
チームキャプテンとして臨んだ翌シーズンに、
抜群の団結力を持ったチームを作り上げ、
16戦全勝という快挙でスーパーボウル出場を果たしたのだ。
グラミー賞受賞アーティストのジェイソン・ムラーズ。
「昔はタバコも吸っていたし、ジャンクフードも食べ、
ビールもすごく飲んで、とてもロックンロールな生活を送っていたんだ。
でも、10年前にサーフィンを始めてから、
それまでの生活の仕方がなんだか変に感じて、
もっと自分をいたわるようになった。
そうしたら活力的にも感情的にも身体がどんどん変わりだして、
調子もすごく良くなった。もう昔には戻れないね。
聞いた人みんなが気持ち良くなるような音楽を作りたい。
そう考えるようになったのも、
オーガニックな生活をするようになってからなんだ」
海上がりに聞く彼の曲は、
まるでまだ波に乗っているかのような気分になり、
ほんとうに気持ちよくなるナンバーが多い。
特に大ヒット曲の「I’m Yours」は最高!!
こころの病気を患ったあとに、
すべての生活をリセットして海に通うことで、
少しずつ自分を取り戻した友人もいる。
もちろん自分もその中の一人。
骨髄移植をする前と今ではサーフィンに対する思いが大きく変化した。
一度は諦めかけた波乗りへの気持ち。
ただ挑戦することや楽しむことだけではなく、
海にある癒しやパワーに目を向けられるようになった。
それからは「マイペース」を大事にしている。
また俯瞰的に海をみる視点をもつことで、
波がない日でも楽しめるようになった。
実際にちょっと海に浸かるだけでも、
カラダやココロがすっきりとリセットされた気分になる。
なぜ人間は海に癒しを求め、生気を養うことができるのだろうか?
もちろんサーフィンが楽しいということもあるが、
それだけじゃない海の力のようなものを感じるときがある。
「生命は海から誕生した」ということだけでなく、
母なる海がもつ包容力や、
海という自然のなかで過ごす時間、
そのなかで何かを得ているのだと思う。
おそらくそのワケは、
「自然」と「自分」以外の何ものにも依存しない、
独立した時間を過ごせるからかもしれない。
サーフィンは他の競技スポーツのように、
相手がいなければ成り立たないものではなく、
たった一人でも最高の楽しみを味わうことができる。
逆にいえば、
この感覚はサーフィン以外では味わえないもの。
自然、そして自分と向き合う時、
この時間こそがサーフィンの至高であり、
海が人間に生気を与える瞬間なのだ。
ヒーリング・オーシャン。
広き雄大な海には、人智をはるかに超えたパワーがある。
あの震災から4年。
この4年は仕事でもプライベートでも後悔のない生き方を模索してきた。
もし何かに興味があるなら、たとえ何歳でも新しい扉を開けてほしい。
きっとそこには人生を変えるすばらしい精神性があるはずだ。
そして海への扉はいつも開かれている。